植物と光〜水草・水槽に最適な光環境の考察〜

植物を育てる上において、光は非常に重要です。

光合成に必要なだけではなく、植物の形態形成(形つくり)にも大きく影響を与えます。

そんな光の性質と植物への作用を紹介しつつ、水草水槽に最適な光環境を考えてみたいと思います。

また、一般論で示しているため最新の発表とは異なる点や、素人の文なので間違いもあるかもしれません。

何かお気づきの点がありましたら、管理者までご連絡ください。

1, 光の色と波長

光とは、その波長の長さによって性質、色が異なります。人間が光の色として認識できるのは「可視光」部分(約0.4μm~0.8μm)で、波長が長くなるごとに

「(短波長)紫→青→緑→黄→オレンジ→赤(長波長)」

と、見え方が変わってきます。下の図(Fig.1)を見ればわかりように、我々が光として目で認識できる部分は、ほんの一部だということが良くわかります。

2, 植物は色素体で光を感じている

人は目によって光を見ることが出来ますが、植物はどのように光を見ている(感じている)のでしょうか?

植物は色素体によって光を感じています。色素体には大きく分けてクロロフィル、キサントフィル、フィコビリンの3種類があります(細かく言うと、他にも沢山あるんですが・・・)。クロロフィルは直接光化学反応を担うのに対し、フィコビリンに吸収された光は、クロロフィルに渡されて初めて光合成に利用されます(間接的なので効率は悪い)。そのためフィコビリンは補助色素とも言われます。
ただし、水の中では(特に上に植物プランクトンがいたりすると)赤や青の光が吸収されて減りますから、クロロフィルでは有効に光を吸収することができません。そのため、クロロフィルに有効な光の到達量が少ない環境では、緑色の光も吸収できるフィコビリン等を持っていた方が、光合成能率が上がるわけです。つまり結論としては、植物が生活する場に到達する光波長の特性によって能率は変化する、ということになります。

ちなみに、我々が育てる水草は主に、クロロフィル(Chorophyll)a及びbを色素体として有します。

クロロフィルは450nm(=0.45μm 青色の光) 付近と700nm(=0.7μm 赤色の光)付近 に特徴的な鋭い吸収帯を持つ。

つまり水草などの高等植物は、青色と赤色の光のみ効率的に利用できるということがわかります。

その他の波長も、効率が悪いながら利用は出来ますが・・・

3, 波長によって植物に与える影響が変わる

上では、水草は主に青色と赤色の光を吸収すると書きましたが、それ以外の光も植物に様々な影響を与えます。そこで論点を水草(光合成真核生物)に対する光の影響に絞ってみたいと思います。

●波長:0.4μm以下(紫外線)

紫外線はほとんどの場合植物には有害。特に280nm以下(殺菌線)が当たりますと植物は短時間で枯れてしまいます。ただし長波長側の近紫外線は植物の形態を正常にし、背を低く、葉を厚くする作用がある。

●波長:0.4~0.5μm(青~青緑色)

赤色光(0.6~0.7μm域)に次いで光合成作用(※1)の大きい波長。 水草だけでなく、多くの藻(コケ)も利用する

●波長:0.5~0.6μm(緑~黄色)

水草の光合成や形態形成には効果が薄い(効率が悪いが、多少は利用出来る)。

※色素体として「フィコビリン」を有する藍藻類や紅藻類(黒髭藻 など)は、この波長を効率よく利用することが出来る。

●波長:0.6~0.7μm(橙~赤色)

光合成、日長作用(※2)ともに最も有効な波長域。やや葉の緑色化を阻害。

●波長:0.7μm以上(赤外線)

エマーソン効果(※3)により、光合成を促進させる効果がある。ただし1.0μm以上では熱作用があるので有害。

※1 光合成作用とは・・・
葉緑体(クロロフィル)が吸収した光エネルギーによって二酸化炭素と水から炭水化物が合成される作用です。

※2 日長作用とは・・・
日の長さ(昼と夜の時間の相互関係)が、植物の開花や結実などの植物生理に大きく影響する作用です。

※3 エマーソン効果とは・・・
0.66μmより長波長側では、光合成効率が急激に低下します。しかし近赤外線を加えることにより、光合成量が促進される現象の事。

長々と書きましたが、要約すると・・・・

光合成には1番「赤色光(0.6~0.7μm)」 2番「青色光(0.4~0.5μm)」

近赤外線は、エマーソン効果によって光合成効率UPに貢献。

ということが判ります。

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※追記 080612
光と植物の形態形成を考える上で、R/FRという考えがある。「R/FR」はR(0.6~0.7μm)/FR(0.7~0.8μm)の比率であらわされ、植物の茎の節間の長さや葉の大きさ等に影響をおよぼすエネルギー量の大小を表す数値。この値が大きければ節間や葉脈が縮小・委化傾向に、逆に小さいと伸長傾向になる。

つまり、アクアリウムにおいて蛍光灯を用いる場合、メタハラと比べると光量が相対的に少なく、軟徒長しがちである。そこで、限られた光量の中で美しい植物の形態を形成するために、このR/FRという概念を考慮したらより良い結果が得られると考えられる。

このことから、0.7~0.8μmに対して、0.6~0.7μmの光を相対的に多く照射してやれば、植物は軟徒長せず(グロッソで言うところの、上に伸びてこない)、しっかりとした形に育つことが期待できる。

4, 太陽光と人工光の違い

上で様々な光の波長と、それぞれの植物に与える影響を書いてきましたが、実際我々が水槽で植物を育てる場合、これらの知識をどう生かせばよいのでしょうか?

はじめに、太陽光と一般的な人工光である蛍光灯について書きたいと思います。上の図(Fig.3)は、太陽光と一般的な白色蛍光灯が出す波長を示した図です。見ていただければわかるように、太陽光はすべての波長を出しているに対し、蛍光灯は一部分の波長を集中的に出していることがわかります。尚、メタハラは太陽光に良く似た波長を出します。

また、上の図として乗せている蛍光灯の波長はあくまで一般的な蛍光灯の波長であり、製品によっては大きく異なるものもあります。メーカーHPなどで製品の波長を紹介しているところもあります。

このことから判ることは、太陽光やメタハラを用いてば放出している波長を気にしなくても良いが、蛍光を用いる場合、放出する波長が植物に有効な光かどうか把握する必要があると考えられます。

スドーは様々な種類の蛍光灯を出しており、すべての商品において放出する波長をHPで提示してあります。是非、一度ご覧になってみてください。「こんなにも違うのか・・・」っと、感じられると思います。

5, 光環境と藻の発生リスク

↑で水草に対する最適な波長のバランスについて論じましたが、水槽に住み着く植物は我々が入れた水草だけではありません。そう「藻」が居ます!!=(アクアリウムでは「コケ」とも呼ばれます)。

藻には様々な種類が存在し、そもそも藻とは言えないようなものもあるので、ひとくくりに言うには語弊があるのですが。。。まぁそれは置いときましょう。とにかく、水草水槽をする上で藻をいかに発生させないかは重要な課題であり、テクニックの見せ所?です。

我々が育てている水草(種子植物・シダ植物・苔=モス等)と、藻と呼ばれるものとでは光の受容体である色素体の種類に大きな違いがあります。

上記にもあったように、我々が育てる水草(種子植物・シダ植物・苔=モス等)の有する色素体はクロロフィルa及びbが主です。それに対し、コケの有する色素体は下の図のようになっています。

 主なコケの種類

代表的なコケ

色素体

クロロフィル

カロチン

キサントフィル

フィコビリン

a

b

c

 藍藻 のり状藻

 

 

 緑藻類 アオミドロ

 

 

 紅藻類 黒髭コケ

 

 

 珪藻類 茶コケ

 ○

 

 褐藻類

※1 ◎は主な色素体。 ○は、◎に比べると総量が少ない色素体。
※2 コケの種類、写真をご覧になりたい方は、「コケ対策.com」様のHPを参照されると良いと思います。
※3 あくまで代表的な例であり、同類の藻であっても、種によって有する色素体は異なる場合がある。

さらに、これら色素の吸収波長は・・・・(種によって異なるため、大体の数値)

色素体

吸収波長の特徴

備考

クロロフィルa

0.43 μm付近と0.663 μm付近にピーク 水草(種子植物・シダ植物・苔=モス等)は、主にこの二つの色素体を有している。

クロロフィルb

0.46 μm付近と0.645 μm付近にピーク

クロロフィルc

(現在調査中)
  カロチン (現在調査中)

キサントフィル

0.4~0.5μ位

光エネルギーの吸収というより、クロロフィルが吸収しすぎた光エネルギーの放散を担っている。

フィコビリン

0.5~0.6μm位 他の色素体では吸収が難しい緑色波長(0.5~0.6μm位を、効率よく吸収できる。

これらの表を見ればわかるように、、クロロフィル以外にも色素は色々あるのですが、その中でも色素体としてフィコビリンを有する 藍藻類や紅藻類(黒髭藻)のみ0.5~0.6μmの波長(緑色)を効率よく利用することが出来ることがわかります。

水草水槽をやられている方は身を持って感じていると思いますが、黒髭藻(Audouinella sp)は付着性が強く、水質が安定している環境下でも発生し、胞子で増えるため撲滅は難しく、水流が強いと水槽全体に増えてしまう、さらには生物兵器(エビや貝、オトシンクルス等)による完全な封じ込めができない、水草水槽の最大の敵ともいえます。

よって、

0.4~0.5μmの波長(青色の光)は水草に有効だが、多くの藻も利用する

0.5~0.6μmの波長(緑色の光)は可能な限り無いほうが好ましい

0.6~0.7μmの波長(赤色の光)は水草に最も有効で、藻の発生リスクも少ない

ことがわかります。

ただ、光環境より養分環境の方が藻の発生を引き起こす主要な要因であることは明白です。藻で悩まされている方は、まず養分環境を見直した上で(肥料やりすぎ・偏り、水替え不足、等)、スパイスとして光環境に目を向けてみてください。肥料については、同HP内、「植物の必須元素」をご覧下さい。

とわいえ、アクアリウムは観賞用である点を考えると、考えるべき問題が発生してきます。

赤色の光ばかりでは非常に暗く感じ、本来観賞用であるアクアリウムの意義を見失ってしまいます。
一方、青色の光は藻の発生リスクはあるものの、清涼感を与え、観賞用としては良い性質を有しています。

ちなみに、ADAの「NAランプ」は青色の光を強化したもので、藻の発生リスクには目をつぶり、光合成と清涼感を求めた商品といわれています。

私は、スドー「トロピカルレッド」を3灯と、家庭用蛍光灯である ナショナル「パルック(クール色)」を手前に1灯という組み合わせで管理しています。トロピカルレッドの特徴は、黒髭が利用する0.5~0.6μmの光を強く抑えた上で、光合成に有効な波長を放出します。また近赤外線を放出するため、エマーソン効果による光合成効率の向上も期待できる素晴らしい商品です。一方、トロピカルレッドの欠点として赤色の光が強く、人の目には非常に暗く見えます。その欠点を解決するため、一番手前に青系の光を強く出す ナショナル「パルック(クール色)」をセットし、観賞用としての価値を失わず、高効率の光合成を求める環境を作っている・・・・・・・・・っと、自分では考えています。

このように、波長から藻の発生リスク、光合成効率、そして見た目を両立した環境を作ることが重要と考えます。

6、適切な照射時間

24時間照明付けっぱなしでも植物は育ちます。

ただ、長時間の照射では藻の生長速度も上がり、生体による藻の除去が追いつかず、結果的に藻が増えていきます。よって、藻の発生リスクを抑える意味で、8~10時間程度が推奨されています。

無論、光だけではなく養分などの環境で発生する問題は異なりますが、我が家の水槽の場合、14時間以上の照射を1週間続けた結果、緑藻が非常に多く発生しました。

7、 総括 水草水槽に最適な光環境とは?

これまで書いてきた要点をまとめると・・・

0.4μm以下(紫外線)の有効性は不明だが、徒長を防ぐことが出来る。

0.4~0.5μm(青~青緑色)は有効だが、藻が発生するリスクもある。

0.5~0.6μm(緑色の光)は藍藻類や紅藻類(黒髭藻 )のみ利用するため、可能な限り無いほうが好ましい。

0.6~0.7μm(橙~赤色)が水草の光合成に最も有効

0.7μm以上1,0μm未満(赤外線)はエマーソン効果によって間接的に光合成効率UP。無いよりはあったほうが良い。

これより、蛍光灯を波長から選ぶとき・・・・・

光合成を高めるには0.6~10μmの光が非常に有効。

多少の藻の発生リスクに目をつぶり・・・

鑑賞性を失わず、光合成を高めるなら0.4~0.5μmの光が有効。

また、黒髭の発生リスクの上昇を生むので

0.5~0.6μmの光は可能な限り無いほうが好ましい

事がわかります。

更に、

8~10時間以内の照射時間にした方が、藻の発生リスクが減る。

明暗をハッキリ付けた方が、植物が健全に育つ。

と考えられます。

以上。乱文長文の中、最後まで読んでいただきありがとうございました。何かの参考にしていただけるとありがたいです。