理系の雑学・豆知識

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酸無水物の覚え方を解説

 カルボン酸のなかで、加熱のみで分子間または分子内で脱水する物質を酸無水物という。受験で出てくる酸無水物はたった3つのみ。ただ、これがいろいろな理由で覚えづらかったりする。なぜかは後で分かります。先に言っておくと、その3つは、酢酸・マレイン酸・フタル酸。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 ◆酢酸→無水酢酸

 

 無水酢酸はアセチル化で必要な重要物質です。酢酸2分子の分子間脱水によって生じます。

 ◆マレイン酸→無水マレイン酸

 

 マレイン酸の話が出てきたら、必ずその相方のフマル酸が出てくるはずです。マレイン酸はシス形なのに対してフマル酸はトランス型です。

 

 マレイン酸はシス形なので、カルボキシル基同士が近い距離にある。だから、無水物を生じる。

それに対し、フマル酸はトランス形なので、カルボン酸同士が遠い距離にある。だから、無水物を生じない。

 

 マレイン酸とフマル酸の話は頻出なので、ちょっと話がそれますが、ここでまとめておきましょう。

 

 まず分子量がC4H4O4であることを覚えておくと、問題で出てきたときにかなり見通しがよくなる。全く予想が立たないと苦労しますからね。すべて数字が4だから、覚えやすい。

 

 それと、沸点がかなり違う。マレイン酸が約130℃に対し、フマル酸は300℃。

 

 その原因は、両者の水素結合する場の違いにある。マレイン酸は、分子内で水素結合をもつのに対し、フマル酸は、分子間で水素結合をもつため、分子間力がマレイン酸よりも強い。通常、分子間力が強いほど、それを断ち切るのによりエネルギーが必要なため、沸点は高くなる。だから、フマル酸の方が高くなるんです。

 フマル酸をマレイン酸にするのは可能です。フマル酸を減圧下で230℃以上の高温で熱すると、無水マレイン酸になるので、これに水を加えればマレイン酸になる。

 また、ベンゼンを酸化バナジウム(V) (V2O5) を触媒にして高温で空気酸化すると、ベンゼン環が開環して無水マレイン酸が生成する。

 ◆フタル酸→無水フタル酸

 

 フタル酸はオルト位なので、メタ位のイソフタル酸、パラ位のテレフタル酸と異性体の関係にあります。

 

 マレイン酸とフマル酸のときの理屈と同じで、カルボキシル基同士が最も近いフタル酸のみが無水物を生じる。

 そろそろ、気付いてるかもしれないけど、ここら辺の話を混乱させる原因は、「フマル酸」と「フタル酸」という非常に似た名前の物質が、微妙にからむからなんです。しかも「フマル酸」は無水物をつくらず(つくるのはマレイン酸の方!)、「フタル酸」はつくるから余計に混乱してしまう。絶対に注意してください。

 ちなみに、ナフタレンを酸化バナジウムを触媒として高温で空気酸化すると、無水フタル酸が生じます。

 ベンゼンから無水マレイン酸が生じる反応と同じパターンですね。ただ、頻度としてはこっちの方がよく出ます。ナフタレンはせいぜいこの話でしか出てこないんで、「ナフタレン」を見たら、まずはこの反応を思い出すのが有効なはずです。