鉄の化学的性質と特徴

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
1 H                                 He
2 Li Be                     B C N O F Ne
3 Na Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra    

 鉄は、非常に身近な金属の1つですね。金属材料として我々の生活の中に完全に浸透しています。やはりクラーク数は第4位と、地殻中に非常に多く存在することがわかります。 

 

元 素
O
Si
Al
Fe
Ca
クラーク数
49.5
25.8
7.56
4.70
3.39

 鉄は、まず赤鉄鉱や磁鉄鉱を高温のコークス(C)で還元します。地理をやっている人は鉄を生産するときに鉄鉱石だけでは鉄は生産できないことを知っているはずです。石炭も必要でしたよね。コークスはこの石炭からとれるんです。

 こうして得られた銑鉄は、炭素などの多量の不純物を含んでいるため、これらをある程度除くことで鉄鋼が得られます。ある程度、というのは鉄鋼にも約2%の炭素が含まれているからです。ただ、これも除いて純粋な鉄にすると、軟らかくなってしまうなど逆に性質が劣ってしまうのでこの状態で用います。われわれの知っている”鉄”は純物質ではなく混合物なんですね。

  

 鉄を中心とした合金も盛んです。一番有名なのはステンレス鋼です。不動態としての性質が鉄よりも強いクロムやニッケルを添加することで、非常に錆びにくくなります。包丁などの台所製品の材料として広く使われていて、最近は生活の場にすっかり定着しました。

◆2つの鉄イオンとその化合物

 

 鉄で最も特徴的なのは、2種類のイオンをもつということです。Fe2+とFe3+ですね。ですから、この2つのイオンを比較してまとめれば鉄の範囲はほぼ終わりです。2種類以上のイオンをもつことは他の遷移金属でもよく見られることです。たとえば銅なんかもそうですよね。

 ただ、Fe3+が安定なのに対し、Fe2+は少し不安定で、電子を1つ放出してFe3+になろうとします。ですから、Fe2+→Fe3++e-が起こるわけです。電子を放出するということは、自身が「酸化される」ということです。ということは、鉄(II)イオンは還元剤だということになります。理論化学の酸化・還元の単元を思い出して下さい。還元剤の代表例として問題に出てきたはずです。

 

 では、2つのイオンをいろいろな角度から比較してみましょう。

 
Fe2+
Fe3+
イオンの色
淡緑色
黄褐色
水酸化物
Fe(OH)2
Fe(OH)3
水酸化物の色
緑白色
赤褐色
ヘキサシアノ鉄(III)カリウムとの反応
◎濃青色沈殿  
ヘキサシアノ鉄(II)カリウムとの反応
◎濃青色沈殿
チオシアン酸カリウムとの反応
×
血赤色溶液
酸化物
酸化鉄(II)
FeO
酸化鉄(III)
Fe2O3
酸化物の色
黒色
赤褐色

 

 では、それぞれについて細かく解説していきましょう。

 

 まず、イオンの色について。無機化学でいかに色が大事かは知っていますよね。どっちがどっちの色なのか確実に覚えましょう。Fe2+が淡緑色、Fe3+が黄褐色です。

 水酸化物も非常によく出題されます。これについても色が重要です。イオンの色と混同してしまうことがあるから気をつけましょう。

 

 ヘキサシアノ鉄(II)カリウムとヘキサシアノ鉄(III)カリウムとの反応は、鉄イオンの検出反応としてよく出てきます。ただ、この反応はとても紛らわしいんです。ヘキサシアノ鉄(III)カリウムは、鉄(III)ではなく鉄(II)イオンFe2+と、ヘキサシアノ鉄(II)カリウムは、鉄(II)でなく鉄(III)イオンFe3+とそれぞれ反応して濃青色沈殿を生じます。

 

 含まれている鉄イオンと同じ組み合わせ同士だったら覚えやすかったんですが、現実はその逆で鉄イオンが異なる組み合わせ同士なんですね。ちなみに組み合わせの違う方だと濃青色ではない違う色の沈殿が生じます。その意味で表では△で表しましたが、ここを聞いてくる問題はまず出ないはずなんで、濃青色の方の組み合わせのみを覚えてください。

 

 ところで、K3[Fe(CN)6]がどちらの化学式なのかはわかりますか?「ヘキサ」は6という意味です。「シアノ」はCN-を表します。「鉄」と「カリウム」は当然含まれていますがこれだけではどっちなのかわかりません。化学式中の”Fe”がFe2+なのかFe3+なのかわからなくては判断できないんです。どうすればいいのかわかりますか?

 まず、”K3″とあることから、[ ]は全体として3価の陰イオンとなっていることがわかります。また、シアン化物イオンCN-は一価の陰イオンです。ということは、鉄イオンの電荷をxとおくと、次の式が成り立ちます。

 

x+(-1)×6=-3

 

 これを解くと、x=3となることから鉄イオンが三価であることがわかります。だから、K3[Fe(CN)6]はヘキサシアノ鉄(III)カリウムの方であることがわかります。

 では、逆にヘキサシアノ鉄(II)カリウムは化学式でどう表されるかわかりますか? 同じように考えれば、K4[Fe(CN)6] になることが理解できるはずです。

 

K3[Fe(CN)6]=ヘキサシアノ鉄(III)カリウム→Fe2+で濃青色沈殿

K4[Fe(CN)6]=ヘキサシアノ鉄(II)カリウム→Fe3+で濃青色沈殿

 

 チオシアン酸カリウムKSCNとFe3+との反応も、ちょっと存在感は薄いですがときどき聞かれるので注意しておきましょう。反応すると血赤色溶液が生じます。血の色に近い色なのでこう呼ばれます。また、気をつけなくてはいけないのは「溶液」であって「沈殿」ではないということです。沈殿物が生じるのではなく、溶液の色が変色します。

 

 

 鉄の酸化物について説明しましょう。表に書いてあるようにそれぞれのイオンに対して、FeOとFe2O3があります。FeOはやはり不安定な物質で、天然には存在しません。それに対し、Fe2O3は非常に身近です。いわゆる鉄の赤サビはFe2O3の水和物が原因です。

 ただ、実は鉄の酸化物にはもう1つあるんです。それはFe3O4です。「四酸化三鉄」と呼ばれます。これは、FeO・Fe2O3とも表されるように、Fe2+とFe3+が1:2の比で含まれています。性質としては強磁性をもつことを知っておいてください。磁石の性質が強いということです。